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みどりの通信 6月号 エスニック風?朝ごはん/今しかない

エスニック風?朝ごはん

 埼玉県北部にカメムシ注意報が発令されました(*)。

 夏の有機農業は、カメムシとの戦いです。カメムシはナスやピーマン、トマトなどの果菜類が大好物。針のようにとがった口をぶすっと果実に突き刺してチューチューと水分や養分を吸います。吸われた果実は変形したり黒っぽく変色したり、傷口から腐って収量の減少につながります。インゲンやササゲなどの豆類は実がつく前の花にもやって来るので、花が落ち、そのまま実ができずに収穫できなくなってしまうことも。一か所にとどまらず、実から茎へ葉へと渡り歩くので、一匹でもいると多くの被害が出ます。

 農家にとってカメムシは百害あって一利なし。ということで収穫中にカメムシが視界に入るや否や親指と人差し指でもってすばやくつかみ、「メシャッ」と潰します。朝飯前の収穫だけでそんなことを100回くらい繰り返す日も。潰すとカメムシ独特の強烈な悪臭がプンとただよいます。そして手にもカメムシ臭がべっとり。家に帰ってせっせと手を洗っても、この臭いがなかなか取れません。

 収穫後の朝ごはん、目玉焼きをご飯にのせて醤油をかけ、かきこもうとした時に、指先からカメムシ臭…。クサイ、クサイ。でもカメムシ臭はパクチーの匂いにも似ています。それで一生懸命「これはエスニック風目玉焼きなんだ」と言い聞かせながら食べるのです。

 そして翌日。あれだけ潰したカメムシが、またどこからか飛来して、チューチュー野菜を吸っています。それを潰す私。そしてエスニック風の朝ごはん。そんな日々が始まります。(友亮)

*…県からカメムシ注意報が発令されるのは令和元年6月以来の5年ぶり。温暖化の影響で越冬した成虫が増え続けていること、昨年の秋口に大量発生したカメムシがそのまま生き残ったことが要因のようです。

 

今しかない

 春から初夏にかけて、こちらの思いとは裏腹に、旬が猛烈なスピードでやって来ては去っていきます。

 「今しかない」「今しかない」とたけのこをもらえば大鍋でゆでて、ご飯にして、いちごをもらえばジャムにして、グリーンピースができれば豆ごはんに、ピラフに。そら豆も「今しかない」「今しかない」ととれるあいだじゅう毎日焼いては食べ焼いては食べ、旬の千本ノックを受けているような日々です。

 季節の恵みをいただけることに感謝しつつ、「今だ」「今だ」と届く野菜に急かされ、「今やって」「今どうにかして」と子どもたちのごはんやらおっぱいやらおしっこやらにも急かされ、もう降参! とすべてうっちゃりたくなる日も。こうなると冬は代り映えしないけれど、その分いろいろ工夫する時間があってよかったと恋しくなります(冬が来ればまた、次々旬がやってくる春が恋しくなるのですが)。

 そんな怒涛の旬ノックに、今年はルバーブとふきが加わりました。ルバーブは小さい頃よく母がジャムにしてくれた思い出の野菜。ルバーブ自体は甘くないのですが、酸味が強く、砂糖と一緒に煮ると甘酸っぱいジャムになります。今年ほんの少しだけ育てて、ジャムにしたら変わらぬおいしさでした。

 ふきは、ふきのとうの時期を過ぎると見向きもしていなかったのですが、畑の隅にわさわさ茂っているのがチラチラ見えて、今年はちょっと使ってみようかと茎の部分をきゃらぶきと煮物にしました。板ずり、アク抜き、筋とりと手はかかりますが、独特の香りと苦味があって美味。これも「今しかない」から食べたいものになりました。…と、忙しい忙しいと言いながら、自分から仕事を増やしては疲れているなんともおかしな人間です。

 もう少しすると畑ではトウモロコシやきゅうり、枝豆が出てきます。庭の木には梅も。そして麦わら集めや麦刈りやじゃがいも掘りでまたまた忙殺されそうな6月。予想外の動きをする天候や子どもをなだめつつ、この旬ノックをバッチコイと受け止めたいです。(照手)