· 

みどりの通信 2021年11月号 ごぼうがトロトロに溶けた話/狐に化かされて石ころを育てた話

●ごぼうがトロトロに溶けた話

 寄居町では昔から、「4月と2月は死にごぼう」なんて言われていて、ごぼうは3月のうちに種をまくのが吉、とされてます。詳しい理由はわかりませんが、2月はまだ寒くて発芽しないから、4月はネキリムシやコガネムシなどが活動し始める時期だから、というのが考えられそうです。というわけで3月中旬にまいたところ、すんなり発芽し、虫害に遭わずすくすく生育。6月上旬には巨大な葉っぱをつけていたのですが、長い梅雨と8月の大雨で、地下深く伸びた根が腐敗。トロトロに溶けて全滅してしまいました。気象が変わってきた昨今では、「3月でも死にごぼう」となるようです…。

 そういうわけで、今年の冬はセットにごぼうを入れられないのですが、紅芯大根やビーツ、山芋など、去年まではなかった野菜がいろいろ入る予定です。(友亮)

 

●狐に化かされて石ころを育てた話

 あるところに芋屋呆助という怠け者でごうつくばりな百姓がおったんだと。畑に出ても真面目に働くということがなく、種まきも収穫も気が向いたときにやるくらいで、ちっとも売り物になるような野菜ができない。それなのに、高値で売れないと怒り出す。「おりゃ、せわしい仕事は嫌いだね。放っておいても大きくなって金になる作物があったらな~」なんて言ってたそうな。

 そんなある日、呆助が仕事をさぼって茶屋で一服していたところ、旅のものがひそひそ仲間内で話しているのが聞こえてきた。「…この芋はもともと山で自生していた芋でな、放っておくだけで大きくなるわ、食ったら滋養があってえら体にいいっつうんで、金になんのさ」。呆助は「そりゃ俺にぴったりの作物だ」つって、旅人にその芋を分けてくれと頼んだんだ。値ははったが、おっかあのへそくりをこっそり使ってその種芋を分けてもらったそうな。そいですぐさまその種芋を畑に植えてみたんだ。

 ところが数日たってもうんともすんとも芽が出てこない。しばらく放っておいたが、1カ月もたつとさすがの呆助も心配になってきた。柄にもなく、毎日様子を見に行き、たまに水をまいたりしてみたそうな。したらどうだ、しばらくして芽が出てきたんだ。呆助は大喜びだ。そのうちツルが伸びてきたら柱を立ててツルを巻きつかせ、夏は日照りで枯れないようにワラをしき、肥やしをくれて水をやり…。甲斐甲斐しく世話をしていたからか、しまいには赤いきれいな花まで咲いたそうな。

 冬になってツルが枯れるころ、呆助は「そろそろよかんべ。金になる芋さできたべ」と芋を掘り始めたんだと。ところが、掘れども掘れども芋がない。ようやく何かにあたったと思ったら、でっかな石ころだったそうな。そんで、ツルの先をよくよく見てみたら、アサガオの種がついていたんだと。

 あんまり怠け者で欲深だったから、狐にでも化かされたんだべな。それから改心して、地道に働くようになったとか、ならなかったとか。

 これでえんつこもんつこ、さけた。

*今年はじめて育てた山芋。頼りないツルだったので本当に芋はあるのだろうか、アサガオを育てていたんじゃなかろうかとびくびくしながら掘りました。果たして、ちゃんと山芋ができていました。粘りが強く、甘みもあって、とろろ汁や山芋鉄板にしたら美味でした。 (照手)